リリース判定の仕組み・リリース判定は品保部長か開発部長か社長が行う

2018年6月18日リリース判定

リリースの最終判定者は品保部長なのか開発部長なのか社長なのか

ソフトのリリース判定を行仕組みも、4つに分けて考えると判り易いですと、リリース判定のための4つのの仕組みの記事で紹介しました。一つ前の記事では、リリース判定は社外向けのソフトのリリースに対して実施するという事を説明しました。

では、そのリリースしても良いかどうかの判定は誰が責任をもって決定するのでしょうか? ソフトの品質に関係する事なので品質保証部長が判定するのが良いのでしょうか。ソフトの内容をよく理解している開発部長が良いのでしょうか。ソフトの品質は会社として保証するので社長が良いのでしょうか。いくつかの考え方がありますが、この記事ではグータラ親父の考える判定責任者について紹介します。

リリースの最終判定は誰ができるの?

ソフトのリリースはハードウエア製品の出荷に相当しますので、普通に考えると品質保証部門の責任者がリリースの判定責任者です。品質保証部門は、その会社の製品全てについての品質について責任を持つ部門で、多くの場合にはその部門長が出荷可否の判定権限と責任を持っています。 

ソフトも製品なので、品質保証部門の部門長がリリース可否の判定をするのが一番良さそうなのですが、組織によってはこれが技術的に難しい場合もあります。

その様な場合も含めて、これまでグータラ親父が見聞きしてきた限りでは、ソフトのリリース判定者には、以下の3パターンがありました。

  1. 品質保障部門の責任者
  2. ソフトウエア開発部門の責任者
  3. 会社の代表責任者(社長)

品質保証部門の責任者がリリースの判定をできるならそれが一番

一般的な会社組織の責任分担という視点でみても、可能であればソフトのリリース判定は品質保証部門の責任者が行うのが、体制上でも無理が無く一番妥当です。

品質保障部門の中に、ソフトの品質保証を担当する部署があって、その部署の責任者がリリースの判定責任者になるのが、一番良い状態だと思えます。 ハードの出荷承認とソフトのリリースとが、それぞれ別の部署で行われているなら、このような状態になると思います。

ソフトの品質保証を担当する部門の責任者が、こちらの記事に書いてあるような視点でソフトの品質を確認して、その結果に従ってリリースの可否を判断する事になります。

ソフトの品質保証を担当する部署が独立して存在していなくても、品質保証部門の中にソフトの品質を専門に担当する人が居れば、こちらの記事に書いてあるような視点での確認は可能でしょうから、その担当者の確認した結果を品質保障部門の責任者が承認するという形式で、責任者がリリース判定を実施した、という形が取れます。

次善の策がソフト開発部門の責任者

品質保障部門の責任者ではソフトの品質の良し悪しを判断が難しくてソフトのリリースの可否を判定できない場合には、仕方が無いのでソフト開発部門の責任者がリリース判定を行う場面もわりと良くあります。

ソフト開発部門の責任者ですので、こちらの記事に書いてあるようなソフトの品質に関する知見を持っていると思われるので、リリース判定の技術的な面においては心配はありません。ただし、第三者としての中立的なリリース判定という意味では、品質保障部門の責任者に比べると、やや立場として不適切です。

品質保証部というのは、一般には製品の設計・製造に直接タッチしない間接部門です。ですから、製品の出荷・売上に直接的には責任を持たないので、製品に対して第三者的として中立の判定ができます。もう少し具体的に言うと、品質保障部門は製品の売り上げや利益に対する責任はありません。品質保障部門は製品の品質にのみ責任を持つ部門です。そのために、売上や利益に影響のでる出荷停止の判断も比較的冷静に判断できます。

しかし、開発部門の責任者はちょっと事情が違います。開発部門の責任者は、開発計画に続く売上計画や利益計画に直結する原価計画に直接責任を持っています。そのために、開発部門の責任者は、出来上がったソフトをなんとか予定通りにリリースをしたい、という立場にあるのです。そのような立場の人に、第三者的な中立の判定を求めるのはちょっと難しい面があるのは致し方ない所です。

とはいえ、品質部門にソフトの品質判定の機能が無い場合には、ソフトについて熟知している開発部門がリリース可否の判定をするしか手は無いので、事前の策として開発部門の責任者がリリース判定を行うという組織も少なからずあります。

最後の策は社長判断

開発部門があればその部門の責任者がリリースの判定を行う事になりますが、開発部門が無い場合にはどうするのが良いのでしょうか? 社内にソフトの開発部門が無いのに、ソフトをリリースする事はあるのか? という疑問も出てくるかもしれません。 

しかし、ソフトの開発を社外に委託している場合や、OEM 開発やODM 開発で、ソフトも含めて委託先に開発と製造を委託する場合等、社内には開発部門が無いけれども製品にはソフトが載っていてソフトのリリース判定が必要な場合も有り得ます。

このような場合には、品質部門にソフトの品質判定の機能が無く、ソフトの開発部門も無い場合があります。その様な時には仕方が有りません、社長にリリース判定を行って頂くしかしありません。 会社の規模が大きく、事業部制を採用している会社の場合には、社長ではなく事業部長になるかも知れません。いずれにしても、品質保障部門や開発部門の1つ上に位置する部門の責任者が、ソフトのリリース判定をする事になります。

なぜ品質部門での判定が難しい?

ソフトのリリース判定は、品質保障部門の責任者が実施できるのが一番良いのですが、品質保障部門では判定が難しい場合も多いです。なぜでしょう?

品質保証部というのは、通常は工場での量産品の製造品質を保証する事を仕事とする場合が多いのです。工場の製造ラインで、良い製品を常に同じ品質で量産するために必要な製造品質を保証するのが、一般的な品質保証部の仕事です。そのために、購入品の品質を確認し、製造ラインでの製造品質を確認し、検査の品質を確認し、それらの活動を通して製品の品質を保証します。そのための様々な手法が昔から考案されてきています。

しかしこの記事に書いてあるように、一品物のソフトの品質は工場での量産品の品質を保証するための手法が殆ど使えません。そのため、ソフトの品質を確認するには、工場の量産品製造とは異なる視点と方法で品質の善し悪しを判定する必要があります。 

ソフトのリリース時に品質の善し悪しを確認するための具体的な方法についてはこちらの記事に書いています。しかし、一般的な工場の量産品の製造品質を保証する事を業務としている品質保証部の場合には、この記事にあるような品質判定の方法は経験が無く判定が難しい場合もあります。

リリースの判定責任者が整理できたので、次はどんなやり方でリリース判定を行うのか? という、リリースの判定方法について考えてみましょう。