ソフトの品質は一品物だから判り難い

2017年9月27日その他

ソフトの品質ってなぜ判り難いのでしょう?

ソフトはひとつひとつが企画・設計・制作される一品物です。一品物とは、例えば著名な陶芸家がつくった湯呑茶碗のような物ですが、この一品物という性質のために工場で大量生産される製品とは若干違った考え方で品質を考えないといけないので、判り難いと感じます。

それでは一品物のソフトの品質ってなぜか判りにくいのでしょう? ソフトウ業界以外の人に対しても、たとえ相手が工場で品質を専門に扱っている品質保証部門の人だったとしても、説明して理解してもらうのはなかなか難いです。 なぜなのでしょうか? 

そもそも、ソフトウエアの品質って、何なのでしょうか?

  •  見つかったバグの件数でしょうか?
  •  修正されずに残っているバグの件数でしょうか?
  •  ソフトウエアの使いやすさでしょうか?
  •  使っていてもハングしないで安心して使えるっていう事でしょうか?
  • モサーとしないで、さくさく動くって事でしょうか?

なかなか、掴みどころがありません、こういう時は、判り易そうな物に置き換えて、考えてみましょう。例えば、、ハードウエア(何かの物)の品質って、何でしょうか?

ハードウエアの品質は判り易いの?

同じ物が何千個、何万個と作らられる量産品の品質は、わりと判り考えやすいです。例えば、パチンコの玉を例に量産品の品質を考えてみましょう。 パチンコ玉は 遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則 で、サイズは直径11mm ・重量 :5.4g以上5.7g以下で鋼製で均一の材質 と決められています。 

なので、例えばパチンコ玉工場-Aで製造された100個のパチンコ玉の直径が 11mm +/- 0.1mm で、パチンコ玉工場-Bで製造された100個のパチンコ玉の直径が 11mm +/- 0.2mm だとすると、パチンコ玉工場-Aのほうが品質の高いパチンコ玉を作っている、という事ですね。

量産されるも物の場合には、設計図で正しい値(本来のあるべき姿)が決まていて、その値を測る事ができる場合には、正しい値に近いほど品質が良い、と言えるので判り易いです。 つまり、設計図どおりに出来ているかどうかで、品質が良いか悪いかを測る事ができるのです。 割と判り易いですね。

量産品じゃない物はどうなのかな?

では、同じハードウエア(物)なのですが、、五重塔の品質ってどうなのでしょう?

興福寺の五重塔と醍醐寺の五重塔、どちらも国宝にしていされている、立派な五重塔です。 では、この2つの塔は品質面でいうと、どちらがどれだけ勝っているのでしょうか? なんか判り難そうです。

そもそも、五重塔の品質って、何なんでしょうか? ・真っ直ぐに建っているという事でしょうか? ・柱に傷が無いって事でしょうか? ・扉の開閉が楽ちんって事でしょうか? ・火事になっても燃えにくいって事でしょうか?

何か判らなくなってきたような、、、

なかなか掴みどころが無いですね。 おやおや、ソフトウエアの品質と同じような事を言ってます。 そうなんです、同じ設計図に従って同じ物を大量に作る時には、設計図どおりに出来ているかという事を測定して、品質を測る事ができました。 ところが、設計図が違う物は、そもそもその設計図どおりに出来ているたとしても、どちらの品質が良いかは、簡単には判りません。

でも、品質の優劣が全くないという事でありません。 日本中には多くの五重塔があり、中には明らかに興福寺や醍醐寺の五重塔よりも品質が劣っていると考えて良い塔もあります。 では、その時の品質って、何が違うでしょうか?

実はこの場合には、設計図どおりに出来ているか、という点ではなくて、設計図その物のでき具合が良いか悪いかで品質が決まる事が多いです。 設計図のでき具合、つまり設計図の品質ですね。 

では、この設計図の品質はどうすれば良いか悪いかが判るのでしょうか? 設計図を作るための元になる設計図どおりにできているかで測れば判るのでしょうか??? 残念ながら、設計図というのは、全て一品物なので、一つとして同じ物はなく、何かを基準に比べる事は難しいのです。

一品物だから判り難いのです!

そうです、この全て一品物なので、一つとして同じ物はなく、何かを基準に比べる事は難しい という事が、ソフトウエアの品質が判り難いおおもとの原因です。 ソフトウエアは、一品物で、一つとして同じ物がなく、一つ一つが別々に設計されているので、品質を測るのが難しいと感じる理由だったのです。

例えハードウエアであっても、一品物はやはり、品質を測るのは難しいのです。 五重塔とか著名な焼き物師による湯呑とか、ハードウエア(物)でも、一品物はソフトウエアと同じで品質を測るのは難しいのです。

 その他のお話に戻る