リリース判定基準・残存バグから電話申告の件数を推定する(その3)

2020年11月26日リリース判定

残存バグで1か月に何件コールセンターに電話が入るか推定します

前2つの記事とこの記事では残存バグがもとでサポートセンターに電話申告が発生する件数を推定計算する方法を紹介しています。これは、ソフトのリリース判定の時に残存バグがあっても、ソフトの目的に沿ったサービス提供への影響が少なけれソフトのリリースを承認する、というグータラ親父の考え方かたです。では、前の記事までに紹介したサポートセンターへの電話申告の件数をリリース可否の判断に使う時に、もう一つ注意しておく点について紹介しましょう。

複数の残存バグが残っているなら電話申告の件数も合計します

リリースするソフトに残存するバグが1つだけ、という事は少ないですよね。複数のバグが残っていた時には、個々のバグ毎に推定計算を実施してその推定件数を合算する事にしましょう。そして、その合計の推定件数がある値を超えたらリリースはできないと判定すれば良いですね。

さてこれだけで良いでしょうか? 何か少し大切な事を忘れている様な気がしませんか?

に使う時に、もう一つ注意しておく点について紹介しましょう。

バグによってサービス提供への影響の大きさも変わります

これまで説明してきた計算式を使って、サポートセンターに1ヶ月あたりに掛かってくる申告電話の推定件数は計算できます。何が足らないのでしょうか? こういう時には具体例で考えると判り易いです。 例えばオンラインゲーム用のソフトを例にして市場で起きる問題を少し整理してみましょう。

(a) ゲームのログインができないです という申告電話が1月に300件発生する

(b) 画面の右下隅の背景の岩のデザインが崩れているよ、という申告電話が1ヶ月に300件発生する

どちらも1ヶ月あたりの申告電話の推定件数は 300件ですが、(a) のログインできない問題がこれだけ市場で発生するなら、このバグが残っているソフトのリリースは止めてバグ修正版の完成を待ったほうが良さそうです。でも、(b) の背景の岩が崩れている程度なら、リリースしても良さそうですね。 そうです、残存バグが原因で発生する問題の影響度も勘案して、リリースの可否の判定をする必要があるのです。

影響度毎にリリース可否の判定値を決めれば良さそうです

ここでも、少し前に考えた重大/重要/通常/軽微 というサービス提供に対する影響度合いを使います。影響度合い毎に、サポートセンターへの申告電話の件数の上限を決めておき、その上限を超えたらリリースできない、という判定を行えば良いという考え方です。

例えば、このような表をエイヤッと作ります。いつものように、役に立つ理論とか前例とかは特にありません。市場の求める当たり前品質を勘案して、エイヤッと決めるしかありません。

影響度合い毎のサポートセンターへの推定申告件数によるリリース判定表

影響度 リリース可能な推定申告件数 特別採用でリリース可能な推定申告件数 リリース不可となる推定申告件数
重大  0件 / 月 0件 / 月 0件 / 月 を超える件数
重要 0.2件 / 月 未満 0.2件 / 月 ~ 0.5件 / 月 0・5件 / 月 超過
通常 1.0件 / 月 未満 1.0件 / 月 ~ 10.0件 / 月 10.0件 / 月 超過
軽微 30件 / 月 未満 30件 / 月 ~ 100件 / 月 100件 / 月 超過

この表を使った、残存バグによるリリース判定の仕方を箇条書きにすると以下のようになります。

  • 残存バグを影響度毎に分類する 
  • 各バグ毎に計算式を使ってサポートセンターへの申告電話の推定件数を計算する
  • 計算された申告電話の推定件数を影響度毎に合算する
  • 合算した値を上記の表に当てはめて、影響度毎の出荷可否の判定を決める
  • 影響度毎の判定の中で、一番厳しい(リリースできない方に寄った)判定を、リリース可否の判定とする

具体例で考えてみましょう。 ゲームソフトに以下のような件数の残存バグがあったとします。 

  1. 影響度=重大な残存バグ   0件
  2. 影響度=重要の残存バグ  1件
  3. 影響度=通常の残存バグ  3件
  4. 影響度=軽微の残存バグ 12件

各々の残存バグによる申告電話の推定件数を計算して、影響度毎に合算した値が以下となったとしましょう。

  • 影響度=重大 の残存バグによる申告電話の推定件数(合算値)   0件
  • 影響度=重要 の残存バグによる申告電話の推定件数(合算値)  0.001件 / 月
  • 影響度=通常 の残存バグによる申告電話の推定件数(合算値)  1.3件 / 月
  • 影響度=軽微 の残存バグによる申告電話の推定件数(合算値)  8.5件 / 月

この場合、影響度が重体、通常、軽微 の残存バグの推定件数は出荷可能な範囲内ですが、影響度が重要 の残存バグの推定件数は特別採用での出荷可能 の範囲内となります。 なので、このソフトウエアは特別採用でならリリースができるという判定になります。なお、特別採用による」ソフトウエアのリリースについては、別の記事に記載していますので、そちらもご覧ください。

いかがでしょうか? これが、グータラ親父がリリース判定の時に行っていた、残存バグによるリリース可否の判定の方法です。 長くなりましたが、ここまで読んで頂いた方は、ほんとうにご苦労様でした。 皆さんがリリースを判断する時に、残存バグについてどう考えるかの参考になれば、幸いです。

(次の記事)リリース判定基準・プロダクト品質はまずは設計品質を確認する に続く